エレクトロニクスの分野で次の時代を牽引する技術のホープとして,ナノ,量子,バイオへの期待が高まっている.これらは,ナノで代表される超微細化構造に伴う新しい物理とその応用,量子力学の工学的展開,及び生命科学の工学的応用を意味しており,既にこれまでの10年で,科学の領域から工学の領域に踏み込んでいるといえる.従来は,錬金術から化学が生まれ,リレースイッチ計算機からコンピュータ科学が生まれるなど,実用的な技術から科学に昇華する例が多かったが,ナノ・量子・バイオは科学から工学が生み出される例として注目されている. まず,1編では,半導体結晶格子定数が無視できなくなるほど超微細化されたデバイス寸法が,シリコンCMOSなど従来型デバイスに与える影響などについて記述する.これにより将来のデバイス工学の方向性を見出すことができる. 同時に超微細化することにより生ずる各種量子状態を制御することによる新しい電子デバイス技術は2編で,同じく新しい光デバイス技術は3編で記述する. 4編では,ナノ技術を支える加工技術,計測技術について詳述する.量子効果はデバイスだけなく,暗号など通信分野やコンピュータ計算分野にも応用でき,これらを5編で記述する. また,エレクトロニクスへの異分野科学の導入として注目されるバイオインフォマティクスやバイオナノテクノロジーを6編,7編で記述する.
3種類のカーボンナノチューブ
(2編3章3-2 より)
STM用カーボンナノチューブ探針
(4編2章2節2-1 より)